「さっきまで機嫌よく遊んでいたのに、急にスイッチが入ったように大泣き…」 「お腹が空いたと気づいた瞬間には、もう手がつけられない!」
1歳前後のお子さんを育てる保護者の方から、こうした悩みを本当によく伺います。
あまりの激しさに、「私の対応が遅いの?」「もっと早くサインを出してくれたらいいのに…」と不安になることもあるかもしれません。
しかし、この「気づいた時にはもう限界!」という姿は、実は順調な成長のサインなのです。
今回は、発達心理学や脳科学の視点から、この時期の子どもの中で何が起きているのかを紐解いていきましょう。
1. 空腹に気づく力「内受容感覚」の発達
赤ちゃんは、最初から「お腹が空いた」とはっきり自覚しているわけではありません。
そこには、「内受容感覚(ないじゅようかんかく)」という力の育ちが関係しています。
「段階的」ではなく「スイッチ」で感じる
大人の場合、「あ、少しお腹が空いてきたな(20%)」→「そろそろ食べようかな(60%)」というように、空腹感をグラデーションで感じることができます。
しかし、1歳前後の子どもはまだこの感覚が未熟です。
- 軽い空腹: まだ脳がキャッチできず、本人は気づかない
- 強い空腹: 不快感が一定のライン(閾値)を超えた瞬間、一気に「お腹が空いた!」という信号が脳に届く
つまり、「気づいた瞬間には、すでに空腹が限界に達している」という状態なのです。

2. おっぱい・ミルクで特に泣きが強くなる理由
特におっぱい(授乳)を求めて激しく泣く場合、そこには「空腹」以上の意味が含まれています。
子どもにとっておっぱいは、以下の3つが一体化した特別な存在です。
- 栄養: 空腹を満たす
- 安心: 抱っこの温もりでリラックスする
- 情動調整: パニックになった気持ちをなだめてもらう
空腹という「体のピンチ」に気づいた瞬間、身体的な不快感と同時に、強い「不安」も立ち上がります。
そのため、「助けて!安心させて!」という欲求が爆発し、激しいギャン泣き(情動反応)につながるのです。
これは決して「わがまま」や「依存」ではありません。「この人なら助けてくれる」という信頼関係(愛着)がしっかり機能している証拠なのです。
3. 「完璧な先回り」を目指さなくて大丈夫
私がレッスンの場でよくお伝えするのは、「泣かせないことが正解ではない」ということです。
この時期に大切な関わりのポイントは3つあります。
① 「そろそろかな?」の予測で心の準備
生活リズムから「そろそろお腹が空く時間だ」と大人が予測しておくだけで、急なギャン泣きへの動揺を減らすことができます。
「よし、そろそろ来るぞ」と心の準備をしておきましょう。
② 泣いたら「すぐに応答」する
「待てる力」を育てるのは、まだ少しです。
今は、泣いた時に「すぐに助けてもらえた」という経験を積み重ねることで、お子さんの中に「世界は安全だ」という基本的信頼感が育ちます。
③ 言葉で感覚を代弁する
泣いているお子さんに、ぜひ言葉をかけてあげてください。
- 「お腹が空いたね」
- 「待てないよね」
- 「つらいね」
こうして大人が感覚を言葉にしてあげることで、お子さんは「自分のこの不快感は『空腹』っていうんだ」と、少しずつ自分の体について学習していきます。
4. まとめ:ギャン泣きは「成長のサイン」
空腹に気づいた瞬間のギャン泣き。それは、
- 感じる力(内受容感覚)が育ってきた!
- 伝える力(自己表現)が育ってきた! という、発達の途中にいる姿そのものです。
「早く気づけない困った子」ではなく、「自分の体の声が聞こえるようになってきた時期」なのだと捉え直してみませんか?
困ったなーと思ってた行動の奥に
「なぜそうしているのか、そうなってしまうのか」を知ると、
見えてくる景色が変わります。
行動そのものは、昨日と同じかもしれません。
それでも、理由がわかると
「困ったこと」だったはずの行動が
成長のサインや心の声に見えてくることがあります。
目の前の現象は変わらなくても、
見方が変われば、意味が変わる。
意味が変われば、関わり方も変わる。
それが、子育てが少し楽になる
大切なヒントです^_^


