~支援者が知っておきたい「寝返り前の発達の見方」~
「まだ寝返りしません」
乳児期の発達相談でよく聞かれる言葉のひとつです。
保護者にとって寝返りは、とてもわかりやすい発達の節目です。
そのため、
「もう○か月なのに」
「周りの子はできているのに」
と不安になってしまうことも少なくありません。
しかし、私たち支援者が見ているのは、「寝返りができたかどうか」という結果だけではありません。
その前に現れるたくさんの準備の姿です。
寝返りはある日突然できるようになるものではなく、それまでの積み重ねの上に現れる発達だからです。
今日は、寝返り前に見られる代表的な発達サインと、その意味について考えてみたいと思います。
寝返りは「回る動き」ではない
寝返りというと、
「仰向けからうつ伏せになる動き」
として捉えられがちです。
しかし発達学的には、
・身体の真ん中を知る
・左右を感じる
・身体をひねる
・重心を移動する
といったさまざまな要素が含まれています。
つまり寝返りは、
「回ること」
ではなく、
「自分の身体を感じながら重力の中で動く経験」
のひとつなのです。
そのため、寝返りができる前には必ず準備の期間があります。
準備サイン① おててを見つめる
生後2~4か月頃になると、
赤ちゃんがじっと自分の手を見つめる姿が増えてきます。
これは「ハンドリガード」と呼ばれる行動です。
大人から見ると、
ただ手を見ているだけに見えるかもしれません。
しかし赤ちゃんにとっては、
「これは自分のものなんだ」
と身体を認識し始める大切な経験です。
また、
・手を口へ持っていく
・両手を合わせる
・指を開いたり閉じたりする
といった遊びも増えてきます。
これらは身体の中心線(正中線)を意識する経験につながります。
正中線の獲得は、その後の寝返りやお座り、手の操作にも大きく関わります。
準備サイン② 足を見つける
次に見られることが多いのが、
足を見つめる
↓
足を触る
↓
足をつかむ
↓
足を口へ持っていく
という流れです。
この姿はとても重要です。
なぜなら赤ちゃんは足を持つことで、
お腹の筋肉
骨盤周囲の筋肉
股関節
をたくさん使っているからです。
足を持つ遊びは、
身体を丸める力
身体の中心を感じる力
左右を協調して使う力
を育てています。
反り返りが強い赤ちゃんでは、この足遊びが少ないこともあります。
支援者は寝返りそのものだけではなく、
「足と仲良くなれているかな」
という視点で見ることも大切です。
準備サイン③ 左右を見る
赤ちゃんは興味のあるものへ顔を向けます。
この「見たい」という気持ちが、実は寝返りの原動力です。
最初は目だけで追っていたものが、
やがて顔が向き、
肩が向き、
胸郭が回旋し、
骨盤もついてくるようになります。
つまり寝返りは、
筋力だけで起こるのではなく、
好奇心によって引き出される発達でもあるのです。
準備サイン④ 横向きになる
寝返りの直前によく見られるのが横向き姿勢です。
横向きは、
身体の左右差を感じる
重心移動を学ぶ
身体をひねる
という経験が詰まった姿勢です。
発達の現場では、
「横向きが増えてきたね」
という言葉が出ることがあります。
それは寝返りが近いからだけではありません。
横向きそのものが発達的に価値のある姿勢だからです。
支援者が保護者へ伝えたいこと
保護者はどうしても
「できた・できない」
に目が向きます。
しかし支援者は、
「育とうとしている姿」
を見つける専門家でありたいと思います。
例えば、
「まだ寝返りしていませんね」
ではなく、
「最近おててを見ることが増えましたね」
「足を持つようになりましたね」
「横向きが上手になってきましたね」
と伝えることができます。
すると保護者の視点も、
結果から過程へ移っていきます。
おうちでできる関わり
寝返りを練習させる必要はありません。
それよりも、
身体を感じる経験を増やすことが大切です。
・おてて遊び
・足遊び
・横向き遊び
・タッチケア
・床で自由に動く時間
これらはすべて寝返りにつながる土台になります。
赤ちゃんは遊びの中で育ちます。
練習の中で育つのではありません。
まとめ
寝返りはゴールではありません。
おててを見ること。
足をつかむこと。
横向きになること。
そのひとつひとつが寝返りへの大切な準備です。
支援者として大切なのは、
「まだできない」
を探すことではなく、
「今どんな準備をしているのだろう」
という視点を持つこと。
今日出会う赤ちゃんたちは、
誰にも気づかれないところで、
たくさんの準備を積み重ねながら育っています。


