クーイングとは?赤ちゃんの最初のおしゃべりに隠された発達の意味

~言葉の始まりではなく、「人とつながる力」の始まり~

1か月の赤ちゃんとのおしゃべり

かわいい声が聞こえるよ。

「あー」「うー」「くーん」

生後1〜3か月頃の赤ちゃんが、機嫌よく目を覚ましているときに聞かれる、やわらかい声。

これを「クーイング」といいます。

クーイングは、かわいらしい赤ちゃんの声として受け止められることが多いですが、発達の視点から見ると、とても大切な意味をもっています。

保護者への支援や乳児健診、家庭訪問などでも知っておきたい、クーイングの発達的な意味について考えてみましょう。


クーイングとは

クーイングは、生後1〜3か月頃にみられる初期の発声です。

「あー」「うー」など、母音に近い音が中心で、泣き声とは異なります。

赤ちゃんが安心していて、機嫌よく覚醒しているときに自然と出てくる声です。

この時期は、まだ言葉を話そうとしているわけではありません。

しかし、この小さな声には、これから始まる言葉やコミュニケーションの土台となる大切な発達が含まれています。


クーイングは脳と身体が育ってきたサイン

クーイングがみられるようになる背景には、赤ちゃんの脳や神経の発達があります。

声を出すためには、

  • 呼吸をコントロールすること
  • 喉(喉頭)を動かすこと
  • 舌や口を動かすこと

これらを少しずつ協調させる必要があります。

つまりクーイングは、

「声が出た」ということだけではなく、脳・神経・呼吸・口の動きが育ってきている姿とも言えます。


赤ちゃんは自分の声を聞きながら学んでいる

クーイングの時期になると、赤ちゃんは自分が出した声を自分の耳で聞いています。

そして、

「こんな声が出るんだ。」

ということを少しずつ学び始めます。

さらに、お母さんやお父さんが笑顔で

「うーって言ったね。」
「そうなの?」
「お話ししているの?」

と返してくれると、

赤ちゃんは

「声を出すと誰かが応えてくれる」

という経験を積み重ねていきます。

この「自分が働きかけると相手が応えてくれる」という経験は、発達心理学では随伴性と呼ばれます。

この体験の積み重ねが、人と関わる楽しさやコミュニケーションの基礎を育てていきます。


クーイングは安心できる関係の中で育つ

私たちはクーイングを「言葉の始まり」と説明することがあります。

もちろん、それも間違いではありません。

しかし、支援者として大切にしたいのは、

「安心できる人とのコミュニケーションの始まり」

という視点です。

赤ちゃんは安心できる相手だからこそ、

「あー」

「うー」

と声を出します。

そして、その声に優しく応えてもらうことで、

「この世界は安心できる場所なんだ。」

「自分の声は受け止めてもらえる。」

という感覚を少しずつ育てていきます。

この経験は、愛着形成や基本的信頼感にも深く関わっていると考えられています。


「会話」は言葉が話せるようになってから始まるわけではない

大人はつい、

「まだ話せないから。」

と思ってしまうことがあります。

しかし、赤ちゃんにとって会話は、生まれてすぐから始まっています。

視線を合わせる。

笑顔を向ける。

少し待つ。

赤ちゃんの声を真似して返してみる。

このようなやり取りを繰り返すことで、赤ちゃんは

「人とやり取りすることは楽しい」

という感覚を育てていきます。

近年、乳幼児期の発達では「Serve and Return(サーブ・アンド・リターン)」という考え方が注目されています。

これは、赤ちゃんからの働きかけ(サーブ)に対して、大人が応答する(リターン)という相互作用です。

クーイングは、その最も早い時期に見られるサーブの一つと言えるでしょう。


クーイングから喃語へ

発声は次のように発達していきます。

  • 生後1〜3か月頃:クーイング(あー・うー)
  • 生後4〜6か月頃:喃語(ば・ま・だ など子音が加わる)
  • 生後7〜10か月頃:喃語が豊かになり、「ばばば」「まんまん」など繰り返しの音が増える
  • 1歳頃:意味のある言葉へとつながっていく

もちろん、発達には個人差があります。

月齢だけで判断することはできません。


観察するときに大切なこと

クーイングの有無だけで発達を評価することは適切ではありません。

支援者は、

  • 表情は豊かか
  • 視線が合うか
  • 社会的微笑がみられるか
  • 音に反応しているか
  • 人とのやり取りを楽しんでいるか

など、赤ちゃん全体の姿を見ることが大切です。

一つの行動だけを見るのではなく、その子らしい育ち全体を見つめる視点が求められます。


保護者へ伝えたいこと

保護者の中には、

「まだ何もわかっていませんよね。」

「話しかけても意味がありますか?」

と質問される方も少なくありません。

そんなとき私は、

「赤ちゃんは話せなくても、ちゃんと会話をしていますよ。」

とお伝えしています。

赤ちゃんは声を出し、

大人は笑顔で応える。

その繰り返しの中で、

言葉だけではなく、

安心する力、人を信頼する力、人とつながる力が育っていきます。

クーイングは、言葉になる前の小さな声です。

でも、その小さな声の中には、赤ちゃんの「あなたとつながりたい」という大きな願いが込められています。

だからこそ私たち支援者は、その一つひとつの声を「かわいい」で終わらせるのではなく、発達の大切な一歩として保護者に伝えていきたいですね。

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