赤ちゃんには何が起きているの?
「やっと寝た……」
そう思って、そーっと布団に置いた瞬間、
ぱちっ。
目が開いて、また泣き始める。
赤ちゃんの寝かしつけでは、本当によくあることです。
これをよく「背中スイッチ」と呼びます。
でも、赤ちゃんは本当に「背中が布団についたから」起きているのでしょうか。
実は、抱っこから布団に移るとき、赤ちゃんには背中以外にもたくさんの変化が起きています。
抱っこの中と、布団の上ではこんなに違う
抱っこの中では、
人の身体にぴったり触れている。
身体を支えてもらっている。
温かさがある。
少し揺れている。
声や呼吸もすぐ近くにある。
ところが布団に置かれると、
人の身体から離れる。
支えられ方が変わる。
揺れがなくなる。
身体の向きが変わる。
触れている場所も変わる。
赤ちゃんにとっては、ほんの数秒の間にいろいろなことが変わります。
だから私は、
「背中にスイッチがある」
というより、
抱っこの中にあった安心できる感覚が、一気に変わったことで目が覚めることがある
と考える方が分かりやすいと思っています。
実は「背中がついた瞬間」より前に反応していた
2022年の研究では、眠った赤ちゃんを寝床に移したときの心拍の変化が調べられました。
すると、赤ちゃんが目覚める方向に反応したのは、背中が布団についた瞬間よりも、大人の身体から離れ始めたときでした。
これは、とても興味深いところですよね。
「布団に触れたから起きた」というより、
「抱っこの中にいた状態から変わった」
ことに反応していた可能性があります。
また、眠ってすぐに置くより、少し時間を置いてから布団に移した方が、起きにくかった赤ちゃんもいました。
でも、
「何分待てば必ず起きない」
というわけではありませんよ。赤ちゃんはそれぞれ違うし、その日の状態もそれぞれですから。
私が親御さんにお伝えしている置き方
私は、抱っこから布団に置くとき、
「できるだけ、急に環境が変わらないようにしてみましょう」「置いたことに気づかれないようにやってみましょう」
とお伝えしています。
たとえば、
抱っこしたまま、まずゆっくり座る。
赤ちゃんの頭や首の角度が急に変わらないようにする。
布団に近づいても、大人の身体をすぐ離さない。
身体が布団に触れてからも、一気に手を抜かない。
赤ちゃんの呼吸や表情、身体の力の入り方を見ながら、少しずつ手を離していく。
そんなふうにします。
「頭から置けばいい」
「お尻から置けばいい」
という一つの正解があるわけではありません。
大切なのは、抱っこから布団へ移るときの変化を、一気に大きくしないことだと思っています。
抱っこしている人のぬくもりがすぐになくならないように。
抱っこしている人の匂いがすぐに離れてしまわないように。
抱っこしている人の声が静かに遠のくように。
横向きに置くときは、そのまま寝かせない
抱っこから布団に移す途中で、身体を急に反らせないように、少し横向き気味に置くこともあります。
ただし、
横向きで置くことと、横向きのまま寝かせることは別です。
眠る姿勢は、基本的に仰向け。
寝床は硬くて平らな場所にします。
枕や柔らかい寝具、ぬいぐるみなどは、赤ちゃんの寝る場所には置かないようにします。
安全に眠れる環境は、寝かしつけとは別に大切にしたいところです。
呼吸や表情も、ひとつの手がかり
布団に置くとき、私は赤ちゃんの呼吸もよく見ます。
呼吸が少し速くなったり、
顔が動いたり、
身体に力が入ったり。
そんな変化があると、
「今、ちょっと目が覚める方向に動いたかな」
と感じることがあります。
もちろん、
「呼吸がゆっくりなら深く眠っている」
と決めつけることはできません。
でも、赤ちゃんの様子を見ながら動くことで、こちらの動きも自然とゆっくりになります。
背中スイッチの相談でも、夜だけを見るのではないんです
「置くとすぐ起きます」
と相談されたとき、私は寝かしつけ方だけではなく、昼間の過ごし方も一緒に見ています。
床でゴロゴロ遊べていたかな。
手足を自由に動かす時間はあったかな。
抱っこ紐やベビーカーの中で過ごす時間が長くなっていなかったかな。
車での移動が多くなっていなかったかな。
もちろん、
「昼間にたくさん動けば、背中スイッチがなくなる」
ということではありません。
抱っこ紐やベビーカーが悪いわけでもありません。
ただ、赤ちゃんの睡眠は夜だけでできているものではないので、一日の過ごし方も一緒に見てみることが大切です。
「どう置けば起きない?」だけではなく
背中スイッチが続くと、
「もっと上手に置かなきゃ」
「また起こしてしまった」
と思ってしまうことがあります。
でも、親御さんの置き方が悪いわけではありません。
赤ちゃんにとって、抱っこの中はとても安心できる場所です。
そこから布団に移るときに、
「あれ?」
と感じて目を覚ますことがある。
そう考えると、
少し見え方が変わるかもしれません。
背中スイッチを完全になくすことよりも、
抱っこの安心から、布団の安心へ、少しずつつないでいく。
そんなふうに考えてみてもいいのではないでしょうか。
まとめ
「背中スイッチ」は、背中だけの問題とは限りません。
抱っこから布団に移るときには、
人との接触、
身体の支え、
揺れ、
姿勢、
温度など、
赤ちゃんが感じていたものがいくつも変わります。
だから、
「どう置けば絶対に起きないか」
ではなく、
「どうしたら、この子が大きな変化を感じにくく移れるかな」
と考えてみる。
そして、
夜だけではなく、その日の赤ちゃんの過ごし方も一緒に見てみる。
そんな視点があると、背中スイッチが少し違って見えてくるかもしれませんね。


