赤ちゃんの反り返りは大丈夫?
心配ない反り返りと相談したい反り返り
〜発達の視点から考える〜
赤ちゃんの身体は、とても正直です。
まだ言葉で伝えることができない赤ちゃんは、泣くこと、表情、身体の動きで、たくさんのことを私たちに伝えています。
その中で、保護者の方からよく相談されるもののひとつが、
「反り返り」
です。
抱っこをすると身体をのけぞる。
授乳中に反って飲みにくそう。
寝かせると背中を弓なりにする。
そんな姿を見ると、
「どこか悪いのかな」
「発達に問題があるのかな」
「このままで大丈夫かな」
と不安になることがあります。
けれど、反り返りがあるからといって、すぐに問題があるとは限りません。
大切なのは、反り返りだけを見るのではなく、赤ちゃん全体を見ることです。
私は反り返りの相談を受けた時、まず次のようなことを見ています。
飲めているかな。
機嫌よく過ごせているかな。
眠れているかな。
視線は合うかな。
仰向けでどんなふうに身体を使っているかな。
反り返りは、診断名ではありません。
赤ちゃんが見せてくれている、ひとつのサインです。
反り返りとはどんな状態?
赤ちゃんの反り返りとは、背中を強く反らせたり、頭を後ろへ倒したり、身体を弓なりに伸ばすような姿勢のことをいいます。
抱っこの中で反ることもあれば、授乳中、眠たい時、泣いている時、仰向けで遊んでいる時に見られることもあります。
大人から見ると、少し苦しそうに見えたり、「身体が硬いのでは」と感じることもあります。
でも赤ちゃんにとっては、身体を動かしながら、重力や刺激に反応している場合もあります。
赤ちゃんはなぜ反り返るの?
反り返りには、いくつかの背景があります。
発達の途中で見られるもの。
気持ちや刺激への反応として出るもの。
授乳後のお腹の不快感として出るもの。
姿勢の使い方の偏りとして出るもの。
つまり、反り返りにはひとつの原因だけがあるわけではありません。
だからこそ、「反っているかどうか」だけで判断するのではなく、その前後の様子や、赤ちゃん全体の育ちを合わせて見ることが大切です。
心配ないことが多い反り返り①
発達の中で見られる一時的な反り返り
首すわり前後や、寝返りに向かう時期には、赤ちゃんが身体を伸ばす動きが増えることがあります。
うつ伏せで頭を上げようとする。
胸を持ち上げようとする。
仰向けで身体をひねろうとする。
見たいものに向かって身体を動かそうとする。
こうした時期に、一時的に背中を反らせるような動きが見られることがあります。
これは、重力に対して身体を使い始めている姿ともいえます。
赤ちゃんは、丸まる力と伸びる力の両方を使いながら育っていきます。
丸まる姿勢だけでも、伸びる姿勢だけでもなく、その両方を行き来しながら、首すわり、寝返り、おすわりへとつながっていきます。
反り返りが見られても、
哺乳ができている。
機嫌よく過ごせる時間がある。
眠れている。
視線が合う。
手足をよく動かしている。
こうした様子があれば、まずは発達の流れの中で見てよいこともあります。
心配ないことが多い反り返り②
喜び・興奮・眠い・疲れた時の反り返り
赤ちゃんは、自分の気持ちを言葉で説明することができません。
そのため、
うれしい。
楽しい。
びっくりした。
眠たい。
疲れた。
刺激が多かった。
そんな気持ちが、身体の動きとして表れることがあります。
例えば、声をかけると嬉しくて身体を反らせる。
眠たくなると抱っこの中で反る。
人が多い場所や刺激が多い場面の後に、身体をのけぞらせる。
このような反り返りは、赤ちゃんが気持ちや刺激を身体で表している姿とも考えられます。
大切なのは、その後に落ち着けるかどうかです。
抱っこで落ち着く。
授乳で落ち着く。
眠ると力が抜ける。
機嫌のよい時間もある。
このように、反り返りが一時的で、生活全体が保たれている場合は、過度に心配しすぎなくてもよいことがあります。
心配ないことが多い反り返り③
授乳後・お腹の張り・逆流に伴う反り返り
授乳後に反り返る赤ちゃんもいます。
この場合、発達の動きというより、お腹の不快感が背景にあることもあります。
空気を飲み込んでお腹が張っている。
げっぷが出にくい。
吐き戻しがある。
胃の内容物が上がってきて不快。
こうした時に、赤ちゃんは身体を反らせることがあります。
授乳後の反り返りがあっても、
体重が増えている。
飲めている。
機嫌のよい時間がある。
眠れている。
このような場合は、よくある経過として見守れることもあります。
ただし、哺乳がうまくいかない、飲むたびに苦しそう、体重増加が気になる、強い不機嫌が続く場合は、医療機関や専門職に相談してよいサインです。
相談したい反り返り
反り返りそのものがすぐに問題というわけではありません。
でも、反り返りに加えて、他の気になる様子がある時は相談の目安になります。
特に見ておきたいのは、次のようなことです。
哺乳がうまくいかない
飲み始めると強く反る。
乳首や哺乳瓶をうまくくわえられない。
飲む量が少ない。
むせやすい。
飲むたびに苦しそう。
このような場合は、反り返りだけでなく、口の使い方、姿勢、呼吸、飲み込みの様子を合わせて見る必要があります。
機嫌が悪い時間が多い
抱っこしても落ち着きにくい。
泣くたびに強く反る。
身体に力が入り続けている。
機嫌のよい時間が少ない。
こうした時は、赤ちゃんが何か不快を伝えている可能性もあります。
睡眠にも影響がある
眠りに入りにくい。
寝てもすぐ起きる。
寝ている時も身体に力が入っている。
反り返りが強くて眠りにくそう。
睡眠は赤ちゃんの神経系や身体の状態を映す大切なサインです。
視線や追視が気になる
目が合いにくい。
人の顔を見ようとしにくい。
おもちゃを目で追いにくい。
いつも同じ方向ばかり向く。
反り返りに加えて、視線や追視にも気になる様子がある時は、発達全体の視点で見ていきます。
仰向け姿勢がいつもつらそう
仰向けにするとすぐ反る。
手足が床につきにくい。
身体が左右どちらかに偏る。
手を口へ持っていきにくい。
足を持つ遊びが少ない。
仰向け姿勢は、赤ちゃんが自分の身体を感じる大切な姿勢です。
ここで身体を丸めたり、手足を真ん中へ集めたりする経験が少ない場合、寝返りやその後の発達にも影響することがあります。
支援者は反り返りの何を見ているのか
支援者が見ているのは、「反り返りがあるかどうか」だけではありません。
反り返りを入り口にして、赤ちゃん全体を見ています。
私が特に大切にしているのは、次の5つです。
1. 哺乳
飲めているか。
飲む時に苦しそうではないか。
むせやすさはないか。
飲んだ後に落ち着けるか。
哺乳は、赤ちゃんの体力、姿勢、口の使い方、呼吸、安心感が関わる大切な営みです。
2. 機嫌
機嫌のよい時間があるか。
抱っこで落ち着けるか。
声かけやタッチで安心できるか。
不快のサインが長く続いていないか。
赤ちゃんの機嫌は、身体と心の状態を教えてくれます。
3. 睡眠
眠りに入りやすいか。
眠ると身体の力が抜けるか。
睡眠中も緊張が強くないか。
生活リズムの中で休めているか。
眠りは、赤ちゃんの育ちを支える土台です。
4. 視線
目が合うか。
人の顔を見るか。
おもちゃを追うか。
声のする方へ反応するか。
視線は、赤ちゃんが外の世界とつながる大切な窓です。
5. 仰向け姿勢
頭の向きに偏りはないか。
手を口へ持っていけるか。
手足が真ん中に集まるか。
足を持つ遊びがあるか。
身体が反るだけでなく、丸まることもできるか。
仰向けの姿勢には、赤ちゃんの身体の使い方がよく表れます。
おうちでできる関わり
反り返りが気になる時、「反らないようにする」ことだけを目指す必要はありません。
それよりも、赤ちゃんが安心して身体を感じられる関わりを増やしていきましょう。
抱っこの工夫
赤ちゃんの背中が少し丸くなるように、身体全体を支えます。
頭だけ、背中だけを支えるのではなく、おしりや骨盤まで包むように抱っこすると、赤ちゃんが落ち着きやすいことがあります。
足遊び
足裏にやさしく触れる。
足を見せる。
足を持つ遊びをする。
足遊びは、赤ちゃんが自分の下半身を感じる大切な経験です。

おてて遊び
手を口へ持っていく。
両手を合わせる。
おててに触れる。
身体の真ん中を感じる経験につながります。

横向き遊び
仰向けだけでなく、少し横向きになる時間を作ると、身体の左右を感じやすくなります。
おもちゃや声かけを少し横から使うのもよい方法です。

タッチケア
強く押したり、無理に動かしたりする必要はありません。
赤ちゃんの呼吸や表情を見ながら、やさしく触れること。
安心して触れられる経験は、身体の緊張をゆるめ、親子の安心にもつながります。

まとめ
反り返りを見るのではなく、赤ちゃん全体を見る
赤ちゃんの反り返りは、心配になる姿のひとつです。
でも、反り返りがあるからといって、すぐに問題があるとは限りません。
発達の中で見られる反り返り。
気持ちや刺激への反応としての反り返り。
授乳後のお腹の不快感による反り返り。
さまざまな背景があります。
大切なのは、
反り返りがあるかどうか
だけで判断しないこと。
飲めているかな。
機嫌よく過ごせているかな。
眠れているかな。
目で人や物を見ているかな。
仰向けで身体をどう使っているかな。
そんなふうに、赤ちゃん全体を見ていくことです。
赤ちゃんの身体の動きは、育ちのサインです。
反り返りもまた、赤ちゃんが私たちに見せてくれているメッセージのひとつ。
そのメッセージを、怖がるだけでなく、丁寧に受け取れる大人が増えていくと、親子の安心につながっていくと思います。


